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You're All I Need - Mötley Crüe(和訳)

たまたま、ひさしぶりに耳にしたこの曲がかっこよくて、歌詞を調べてみました。

モトリー・クルーは80年代に活躍したハードロック・バンドですが、何より渋く艶のある高声と80年代らしいギター音が素敵で、いま聴いてもこんなバンドはなかなかいないと思わせます。

この「You're All I Need」はちょっと危険な曲ではありますが、よく読むと胸が痛くなるような歌詞だったので、和訳してみました。

 

***


The blade of my knife
Faced away from your heart
Those last few nights
It turned and sliced you apart
This love that I tell
Now feels lonely as hell
From this padded prison cell

お前の本心については
目を背けていたのに
この数日の夜のうちに変わってしまった
頭の中のナイフでお前を切り裂いてしまったよ
この愛は
今じゃ地獄のように淋しいんだ
独房にいるのさ

 


So many times I said
You'd only be mine
I gave my blood and my tears
And loved you cyanide
When you took my lips
I took your breath
Sometimes love's better off dead

何度も言ったよな
おれだけのものになってくれって
おれの血も涙もお前に与えたよ
愛してた、だから毒薬も与えたのさ
お前とキスした時に
それをお前に飲ませたんだ
たまに愛なんてない方が良い時があるんだな

 


You're all I need, make you only mine
I love you so I set you free
I had to take your life
You're all I need, you're all I need
And I loved you but you didn't love me

おれに必要なのはお前だけだった、おれだけのものにしたのさ
愛してたんだ、だからお前を解放したのさ
お前を死なせるしかなかった
おれに必要なのはお前だけだった、お前だけだったんだ
おれはお前を愛してた、でもお前はおれを愛してなかったんだな

 


Laid out cold
Now we're both alone
But killing you helped me keep you home
I guess it was bad
Cause love can be sad
But we finally made the news

冷たい場所に横たわって
今じゃ二人とも孤独だな
でもお前を殺すことでお前を家に留めることができたのさ
こんなことは間違ってたんだろうな
愛がこんなに悲しくなるなんて
だけどおれたちは結局やっちまったんだ

 


Tied up smiling
I thought you were happy
Never opened your eyes
I thought you were napping
I got so much to learn
About love in this world
But we finally made the news

微笑んだまま硬くなって
お前は幸せなんじゃないかって気がしたよ
もう目を開けることはないのに
寝てるだけなんじゃないかって気がしたよ
おれはたくさん学ばなきゃならないな
現実の愛について
だけどおれたちは結局やっちまったんだ

 


You're all I need, make you only mine
I loved you so, so I put you to sleep

おれに必要なのはお前だけだった、おれだけのものにしたのさ
愛してたんだ、だからお前を眠らせたのさ

 

 

***

 

歌詞は少しややこしいのですが、「お前(you)」はナイフで刺されたわけではないと私は解釈しています。

実際の死因は、シアン化物 (cyanide)ではないかと思います。想像ですが、「おれ」は互いにキスをしている時に、自分の口の中に隠しておいた毒物を「お前」に飲ませて、文字通り呼吸を奪ったのではないでしょうか。

最初の段落の「おれのナイフはお前の心から顔を背けていたのに、それが変わってしまい、お前を切ってしまった(Faced away from your heart/It turned and sliced you apart)」というのは、相手を死なせてしまい、逮捕されて、牢屋で夜を過ごすうちに、相手の心について誤魔化せなくなってきてしまったということだと思います。

相手の命を奪ったことで、その相手が自分のものになったと思っていたけれど、「お前はおれを愛してはいなかったのだ(but you didn't love me)」と、おれは気づきます。相手の心という真実からもう目を逸らすことができなくなったのです。そして、大事に抱いていた「心の中のお前」をナイフで切り裂いてしまい、自分にはもう誰もいない……。

おれは牢獄でようやく「この世の愛について、自分には学ぶべきことがたくさんある(I got so much to learn/About love in this world)」と悟るのですが、起こってしまったことは取り返しがつきません。自分のものにしたはずの「お前」さえも切り裂いてしまい、地獄の寂しさを味わっているのです。相手を殺してしまったのだから当然の報いですが、悲しく心に響く歌詞ではないでしょうか……。